大判例

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高松高等裁判所 昭和30年(う)233号 判決

原判決は、被告人が昭和二十九年六月十二日法律第一七七号覚せい剤取締法の一部を政正する法律施行の前後に亘り常習としてした覚せい剤譲渡行為が包括一罪を構成するものとしてこれに対し改正後の覚せい剤取締法第十七条第三項第四十一条第一項第四号第四項を適用処断したことは所論の通りである。論旨は常習犯として処罰する旨の規定のなかつた当時の行為にも改正後の常習犯処罰規定を適用したのは違法であるというのである。

しかし、或る犯罪を常習犯として通常の犯罪と区別して処罰の対象とする所以のものは犯人の反覆累行性から出た一連の行為はこれを包括的に評価するのを相当とするからである。従つて常習として覚せい剤を譲渡する等の行為が特に常習犯として通常の譲渡行為等と区別して処罰されることとなつた以上、右常習犯処罰規定が新設施行される以前にした譲渡行為もそれが犯人の常習性から出た一連の犯行と見られる限り右改正法律施行後の譲渡行為と包括して常習犯としての一罪を構成するものと解するのが相当である。今本件につきこれを見るに、被告人は昭和二十九年一月初頃から昭和三十年一月二十一日頃迄の間に別表記載の通り前後十三回に亘つて加藤春江外二名に対し二CCアンプル及び四CCアンプル入り覚せい剤注射液合計五万五千六百三十本を代金合計三十三万七千七百円で譲渡したものであるから、これ等前後一連の行為は被告人の常習性を形成し或は常習性から出たものとして包括して改正後の覚せい剤取締法第四十一条第四項所定の常習犯としての一罪を構成するものといわなければならないのである。これと同一見解に出た原判決は正当であつて法律の適用を誤つたとの違法はない。論旨は理由がない。

(中略)

よつて刑事訴訟法第三百八十一条第三百九十七条により原判決はこれを破棄し、同法第四百条但書の規定に従い当裁判所において自判することとする。

罪となるべき事実及びこれを認める証拠は原判決と同一である。法律に照すと、被告人の判示所為は覚せい剤取締法第十七条第三項第四十一条第一項第四号第四項に該当するからその所定刑期の範囲内で被告人を懲役二年に処し、原審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項但書の規定に則り被告人にはこれを負担せしめないこととする。

(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 渡辺進)

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